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ご挨拶 – 12月18日 リサイタル

鶴賀流十一代目家元 新内節人間国宝 鶴賀若狭橡

日本国大受難の今年も残す処あと二週間となりました。私は其の国難の中を国内外で新内演奏活動して廻りました。
三月の東北大震災直後の困難な中をポーランド、十月にはバルト3国(エストニア・ラトビア・リトアニア)へ外務省の要請で海外公演に出かけました。ポーランドでは「蘭蝶」と日本舞踊二題と、本日の演目の「蜘蛛の糸」を上演しました。
またクラクフでは会場の皆様が真心善意にて集まった、震災への義援金をお預かりし、新聞社へ届けました。
バルト3国では八王子車人形と「八百屋お七」と「佐倉義民伝の甚兵衛の渡し」を上演。二度の遠征4国とも大盛況、大歓迎を受け日本伝統芸能に深い理解と大いなる感動を受けた様子で、鳴り止まぬ拍手とスタンデイングオベーションに我々の方が感激した次第でした。芸の外交による交流は両国間の相互理解を深め、温かい関係を構築し親睦の絆となると確信しました。文化庁文化交流使である者として幾分とも日本文化の紹介と平和外交のお役に立ったようです。すでに海外30数カ国の50都市以上を訪問していますが、もともと私は海外公演も好き外国旅行も好きなのです。
ですから少しも苦痛ではなく充分に楽しんで出かけております。今後も健康に留意しつつ、新内と日本伝統芸能の紹介と、多くの人達との素敵な出会いによって友好を深め、国際親善活動をして行きたいと願っております
また本年も文化庁事業の「次代を担う子供の文化技術体験事業」も十数校を廻りました。来年廃校になる小学校や、地震の被害を被った地域の学校をも訪問しました。次代の日本を担う子供の為にも、伝統芸能の普及伝承の為にも大きな役割を果たす素晴らしい事業です。然し事業仕分で年々国の文化活動が縮小されているのは残念です。
経済不況の中でまず第一に文化予算から削減されるとは情けないことです。有形で物を満たし、無形で心を満たす。
どちらも人間には必要不可欠です。
本日は日本の伝統芸能の上演で本年の締めくくりと致します。今回はポーランドで公演した「蜘蛛の糸」を上演します。
芥川龍之介が児童用に書いた小説で、小学校の教科書にも取り上げていますので、是非とも小学生に鑑賞して頂きたいと思って創りました。そしてこの曲は出演者全員で創り上げた作品であります。
古典の「石川五右衛門」は三段からの構成ですが、今回は≪まま子責め≫と≪お瀧殺し≫の二段を語ります。
≪釜入りの段≫は次回に回します。軟派との印象が強い新内節ですが、決してそうではなく、多種の曲目が存在する浄瑠璃である事を知って頂きたいと思います。
来年以降の日本は、世界はどう変革して行くのでしょうか。暗黒の幕明けになって欲しくありません。
世の中がどうであれ健康元気でいたいものです。皆様には住い新年でありますようにご祈念申し上げます。
本目は師走のご多忙の処をご来場下さいまして誠に有り難うございました。

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