ご挨拶 – 新内の会
会主 鶴賀若狭掾
暖かい霜月でしたが、皆様にはご健勝にて師走をお迎えの事と存じます。
日頃は多大なご支援を賜りまして誠に有難うございます。
本年も多くの事件や甚大な被害をもたらした災害等が多発し、厳しい一年でありました。
文化芸術は太平の世の中にこそ発展があります。
また文化芸術が果たす役割と価値は大きくそして重要な存在意義をもちます。
年年歳歳、伝統芸能も少子高齢化が進みます。私も高齢者の仲間ですが、お陰様で健康にして意気軒昂であり、新内の為に尽力貢献する壮年新内語りでありたいと願っています。
今回の新内の会は「明治の女・月三題」をテーマにしました。
- 泉鏡花作「婦系図」の湯島境内の箇所を脚色作曲して【春の月】
私のお弟子のベテラン二人による息のあった「お蔦・主税」の名場面。 - 事実を基にした舞踊「酔月情話」の大川端での殺し場は皐月の【おぼろ月】
藤間流の重鎮の藤間仁章師と花柳流の実力派の花柳貴比師による「お梅、峯吉」の舞踊劇 - 樋口一葉作「十三夜」を脚色作曲して【十三夜】
十数年以前の作品。樋口一葉が五千円札に載った記念に築地本願寺に於いて、今秋に逝去なされた故塩川正十郎先生が一葉を顕彰し法要を営み、その節に演奏した想い出深い作品。以来お世話になった塩川先生を偲びつつ、慎んで哀悼の誠をささげる鎮魂演奏です。
日本人の心に宿る(月)は陰の世界観。
この感性を以て日本の文化芸術が月と一体感をなして育まれてきました。
年の瀬を控えた初冬の一刻、月に心を映す物語をお聴きくださいませ。
本日はご来駕賜りまして有難うございました。