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伝承芸の真摯な取り組み

新内若手伝承考育成研修発表会ご挨拶

新内協会理事長 鶴賀若狭禄

日本伝統音楽の後継者不足により継承の危機が、各ジャンルを超えて叫ばれてから久しい。芸の種類によって事情や継承危機の内容が若干異なるが、先行きの心元なさは大同小異であり、各々頭を悩ませている現状であろうと思われる。その悩ましい問題を各流派が其々の方策や試行を重ね、各団体が一丸となり或るいは個人が危機感を抱いて精力的に活動している人もいる。そう言った個々の活動と、存続の危機を訴えてきた声が届いたのか、国も伝統芸能の衰退を由々しき事と認識したようで、その為の文化予算も増額されたようであった。然しその矢先に昨年の東北大災害によって未曾有の国難が起き、当然その復興復旧財源は莫大な予算を必要とする。そうなると先ず最初に削られるのが文化予算だそうで、これもまあ致仕方ないかなとも思う。だがその厳しい予算枠の中での今回の文化庁補助事業が行われる事となった。我が新内協会にも継承伝承者を育成養成する活動を支援しようとの事業である。誠に願ってもない文化庁からの有り難い申し出であり、その事業の主旨にそって新内伝承者を育成養成する事となった。

日頃から若手伝承者は芸道に精進し、芸の練磨には余念はなく師や先達から古典曲の本道を学び、現代の感覚を取り入れた新作にも取り組み、若い世代の新内ファンの増加に精励努力している。然し尚その上に新内の先輩方の指導養成を得て益々芸の向上を目指す。古手若手が一緒になって新内の継承に尽力するようにとの文化庁からの指導なのです。その研修した若手の成果の披露発表をするのが本日の会であります。

芸の修得向上はー朝一タで取得できるものではありません。日頃の弛まざる修練で技術を磨き、そこから芸に昇華する。語り手は喉を鍛え音色を増やし豊かな魅力ある声を体得し、三味線弾きはどのような曲にも対応出来る技術の習得、この喉と手の上達によって深遠なる芸への階段を昇り始める。その上人間性を高め心を修め、終着のない道のりを歩む。技術が伴わずして物語の心だとか登場人物の心情とか情景や叙情を表現できる訳はない。先ず形の有る物、形の見えるところからの確固たる技術を身につけてから芸への出発です。とかくこの社会で勘違いの多い精神論先行の悪癖が存在しているようです。芸は己との戦いであり他人との競争でもなく、また芸を金儲けの手段にしてはなりません。芸は売名欲や出世欲に囚われると質が落ちるようです。純粋に芸と対峙したいものです。当に芸は入なりです。これは若手演奏家に限った心得ではありません。私達全ての芸人は芸を通して人生修業の道を歩み、芸道精進を目指したいと願うものです。新内協会の若手も古手も共々に新内伝承に尽力し、芸の研鑽に真摯に取り組んで参ります。

末永く新内をご愛好頂きますように心から御願い申し上げます。

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