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日本の大災害とポーランド公演記(2)

クラクフはワルシャワから約300キロ南へ行ったところで日本の京都のような古都です。
ホテルへ入ってからすぐ車で強制収容所のアウシュビッツへ出かけました。
今回の訪問でどうしても見学をしたいとお願いをしていた場所です。今に残る大量虐殺の行われたアウシュビッツ強制収容所の建物。何の罪もないユダヤ人やポーランド人達が捕えられ連行されてガス室へ送られ殺された20世紀最悪の悲劇の場所。箱詰めされ何も判らず知らずに乗せられて来た汽車の鉄道の線路が悲しげに今も引かれてあった。ここが列車も人生も終着駅。そのまま殆どがガス室へ。幼い可愛い無邪気な子供たちも…。

アウシュビッツ強制収容所

収容者棟の中には数多くの遺品が展示してあります。馬小屋の中の貧しい木ベット、横に並んだ簡素なトイレ、拷問室、ガス室、見張りに鉄条網が、今尚地獄を感じさせる建物と雰囲気に身の毛がよだちます。人は何故非道の悪魔になれるのだろうか。この余りにも理不尽な残虐な行為は、どういう神の思惑なのでしょうか。いつの世にも繰り返される人間の恐ろしい狂気の蛮行です。皆それぞれ沈痛なる面持ちにてクラクフのホテルへ戻ったのでした。
日本では大被害の中にありますが、クラクフで公演が出来る事に取り敢えずホットしました。そしてやはりチャリテイ公演となっての開催となりました。

高電圧フェンス横にて

日本の大災害は勿論大きく連日報道されています。我々の訪問も新聞やテレビ等で報道されていましたし、私もテレビや新聞社のインタビューを受けました。
その報道もあってか会場は、当日になっての入場者が殺到して大入り満員となったのです。会場は「日本美術技術博物館マンガ」で、ここは1987年に日本が援助し日本人の建築家磯崎新先生が設計して日本の美術技術を紹介する為に建てられたのです。マンガとは葛飾北斎の浮世絵の漫画絵からとった名前であります。ポーランド人がいかに日本に興味を抱いているかが分かる美術館です。

この度の公演のテーマは「日本の伝統音楽・舞踊の美」として番組編成としました。訪問した出演者一行の団長の私は新内の浄瑠璃を語り、三味線は鶴賀伊勢次郎と新内勝志壽、舞踊は副団長の藤間仁章と花柳貴比、箏は富元清英、尺八は吉岡龍見そして鳴物は藤舎朱音の8名。演目は新内の素浄瑠璃「らん蝶」。「雪」は新内舞踊で立ち方は花柳貴比、「万歳」は地歌ので立ち方は藤間仁章、唄と箏は富元清英、尺八は吉岡龍見、鳴物は藤舎朱音。そして全員参加の芥川龍之介作・鶴賀若狭掾脚色・作曲・構成の新作「蜘蛛の糸」の4曲。ショパン生誕200年記念事業ですので、しっとりと聴かせ観せるシビアな作品を選びました。
ポーランド人は大変に日本大好きな国民で、日本の文化芸術をよく学んで理解しております。ポーランド人と日本人は気質や感性が良く似ているように思われます。当地を初訪問しました私も短期間でしたがそう感じ、親しみを強く覚えました。演目の選定も良かったと思います。公演は字幕を出しませんでしたが、観客(99%ポーランド人)の皆さんが、曲の内容を正確に理解してくれたようです。終演後のパーテイでそれを実感しました。公演は観客の心を捉えて、大成功であったと確信しています。

世界的な映画監督で日本でも多くのフアンを持つワイダ氏は、この公演を大変楽しみにしていらしたのですが、ワルシャワ公演が中止を残念がっていらしたようです。クラクフへはワイダ監督の代りに奥様がお越しになり感動し、賞賛を受けました。私達が感動しました。(3回目に続く)

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